今年の夏も節電対策でクーラーの使用を控えるご家庭は多いと思いますが、全くクーラーを使わない生活は、現在の日本では非現実的。特にカラダの体温調節機能が上手に働きにくく、熱中症が重症化しやすい小さいお子さんや高齢者がいらっしゃるご家庭では、ぜひ無理をせず使っていただきたいのですが…。  とはいえ、普段からできることもあります。暑さに強くなるために重要なことの一つ、それは「汗をかくこと」なのです。そして、汗をかきやすいカラダにするためには、夏本番よりもその前から始めるのが効果的。今年の夏を元気に乗り切るために、今から夏に強い体を作りましょう! ■熱中症も夏バテも体温調節の異常!  「熱中症」とは、「熱に中る(アタル)」と書き、暑さによって起こる体の障害の総称で、以前使われていた「熱射病、日射病、熱痙攣、熱疲労、熱失神」などの言葉をひとまとめにしたものですが、その本質は「高くなる体温を下げられないことによる障害」です。  一方、夏バテは「なんとなくだるい」といった夏の体の不調の総称ですが、現在の夏バテは、暑さからくる食欲の低下や食事の偏り、睡眠不足といった単純な従来の原因に加え、冷房の効いた室内と年々暑くなる炎天下を行き来することで、その温度差に身体がうまく対処できず、カラダが混乱して自律神経失調状態になるといった複雑なものになってきています。急に気温が変わると体調を崩すように、体の温度を一定に保つのは大変なのですね。熱中症も、急に暑くなる梅雨明けに多く発生します。  それでは、体温調節のために重要なことは何でしょうか? ■汗を上手にかく習慣を!  汗をかくことは、カラダの温度調節のためにとても重要。上手に汗をかくには普段からカラダを動かしたりして、汗をかく習慣をつけておくことが必要です。でも暑い真っ盛りに運動するのも大変ですし、それこそ熱中症も心配。今のうちから汗をかけるようにしておきましょう。  具体的には、ちょっと暑い状況で、少し汗をかくくらいの運動を1日15~30分間、週3~4回、1ヵ月程度続けて、さらに運動後の30分以内にたんぱく質と糖質を多く含んだ食品を摂取すると、カラダの血液量が増えて、暑さに強い体になるといわれています。  「運動」といっても、そんなに構えなくても大丈夫。普段あまり運動していない人は、大股で早めに歩くことを3分間、その後3分ほどゆっくり歩いて、それを繰り返してみて下さい。コレを一日5回以上できれば、立派な15分の運動になります。大股に歩くのが難しい、という人は「1.2.3」とカウントして、3歩目を大きく踏み出すようにしましょう。  運動後のたんぱく質は10~20g、糖質は15~30gくらい摂ると効果が高まります。牛乳やヨーグルトなどの乳製品で換算すると最低300gくらいになり、一回に摂るのがちょっと多いという人は、数回に分けたり、バリエーションとして豆などのタンパク質や、おにぎりなどの糖類と組み合わせても良いでしょう。 参考:節電下の熱中症予防のための緊急提言(日本生気象学会) ■着るもので上手に体温調節!  冷房のきいた室内と蒸し暑い外を往復すると、身体はその変化についてゆけません。5度以上の温度差に対しては、身体の温度調節機構はうまく働かないと覚えておきましょう。設定温度は省エネの面からも28度がオススメです。  とはいっても公共機関の冷房はどうしようもないですし、オフィスの冷房もなかなか自分ひとりでは変えられません。そこで、はおりものを一枚持ってこまめに脱ぎ着するのが上手な夏バテ対策。  さらに熱中症予防に危険なのは直射日光。室内ではTシャツ、ポロシャツなどの肌をだした軽装がおススメですが、戸外では反対に皮膚をあまり出さないようにしましょう。風通しのよい白いシャツを前あきで羽織ったり、日傘やつば広の帽子などで日光をさえぎるのもよいでしょう。 ■除湿や扇風機をうまく使う  体感温度には湿度、風速などが関係します。冷房で体調が悪くなる人は「冷房より除湿」を心がけましょう。湿度が低いと涼しく感じます。さらに風があると体表から熱が奪われて涼しくなるので扇風機を併用するのもオススメ。28度くらいの設定の除湿で、扇風機をサーキュレーター代わりに使うのも良いでしょう。直接冷たい風が体にあたるようにすると、体の表面の熱が奪われつづけて体が疲れてしまうので、扇風機も冷房も直接体に当たらないようにお気をつけ下さい。 ■食べ物は量より質、水もコマメに補給して  最近「夏太り」が話題になっていますが、これは今までの夏バテのイメージを引きずって、冷房の効いた部屋にいるのについつい食べすぎてしまうことが一因。しかも冷やし中華やアイスクリームなど、冷えたものが多い夏の食事は、意外と油分や甘みも感じにくいので要注意。  そこで、これからの暑さ対策の食事としては、少量でも良質のたんぱく質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂るのが大事です。  夏バテ対策に特に重要なビタミンは糖質の代謝を助けるビタミンB群。疲労回復効果や、肌の健康を保つ働きがあり、豚肉や精製していない穀類、豆類などに多く含まれます。  夏バテ防止食品として有名なうなぎは、たんぱく質も多い上にビタミンの宝庫ですが、特にビタミンAが多いことでも知られています。ビタミンAは粘膜を強くするので、疲れがちな胃を守る役割も期待できます。  また野菜や果物に多いビタミンCは体の老化を予防したり、紫外線の肌ダメージを防ぐ効果があります。ただ、ビタミンCはタバコやストレスで消費されるので、心当たりのある人は多めに摂りましょう。血流を改善し、ホルモンの分泌を助ける作用のあるビタミンEは、夏でも冷える女性におススメです。  ただし、ビタミンにも過剰症があるので、できるだけ食事から摂るように、サプリメントなどで摂る場合は一日の限度量を超えないようにご注意下さい。  もちろん暑くなってきたら、熱中症予防のためには水分が必要ですが、基本は寝る前、起床とき、入浴前後にコップ一杯(200ml)くらい、あとは、コマメにのどが渇く前に少しずつ摂るようにしましょう。  とにかく、人間には「恒常性」という、体を一定に保つしくみがあるので、急激な変化は本人が気づいていなくてもカラダには大きな負担がかかっています。健康法は何でも、「徐々に」「コマメに」だと覚えておきましょう。